〈2022年5月〜〉
【基本設定】
名前 | ジョナサン(Jonathan Lim) |
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住居地 | シンガポール |
国籍 | シンガポール(中国系) |
職業 | 亡くなった父の建築会社を引き継いで経営 |
年齢 | 36才 |
家族 | 8年前に離婚後、近くに両親と小学生の‘娘がひとり住んでいる。
本人はひとり暮らし。 |
最初のアプローチ | インスタグラムのDMから |
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利用チャットアプリ | LINE |
詐欺手段 | 仮想通貨 |
私は、インスタグラムのアカウントをいくつか持っていて使い分けているのですが、彼は愛犬の写真をUPしているアカウントに日本語でメッセージを送ってきました。
相手と日本語で話ができると、なんとなく安心して、それからお互いのことをいろいろ話すようになりました。
今思うと、彼はその道(ロマンス詐欺の)ベテランだったのだと思います💧
日本が大好きで、とてもフレンドリーで優しく、やり取りに慣れていました。
中国系の人に多い短髪で、スポーツマン。
会社経営者なので、午後は4時ごろ退社し、夕方からはスポーツジムに通ったり、友人とテニスや乗馬を楽しみ、高級レストランで夕食を済ませ、マーライオン公園を見下ろすオフィスに近い自宅マンションでは、夜になると仮想通貨の取り引きをするというような生活を、私に垣間見せました。
彼のインスタグラムのアカウントには、日本の銀座で撮った自身の写真や、日本食の写真、シンガポールの高層ビル階のオフィスから撮った景色の写真、愛犬(来福)と戯れている写真が投稿されていました。
彼はとにかくマメで、朝出勤前、ランチタイム、夕方退社する頃、帰宅してから就寝するまで、ずーっと私にLINEで連絡をしてきました。
彼がやり取りの中で特に強調していたのが、「日本が大好き」なことと、「暗号資産(仮想通貨)でどれだけ稼げるか」ということでした。
コロナ禍になる数年前に彼のお父さんが亡くなり、ひとり息子の彼が建築会社の経営を引き継ぐことになったのですが、コロナ禍の不景気で会社が倒れそうになり、その時に、彼と彼のお母さんは暗号資産の投資で収入を得たことで会社を立て直すことができ、しかも今は老人介護施設などに毎年寄付をし、今は保護犬の収容施設を建設していると言いました。
週末には家族で老人ホームへ慰問に訪れるのだと言って、介護施設の写真を送ってきたりしました。
私が夫の愚痴を言うと、「僕のように暗号資産で稼げるようになれば、キミは我慢しなくても自立して生活できるんだよ?」というようなことを何度も言いました。
シンガポールの女性は、結婚すると外で働かずに家庭内で投資をして収入を得るのが普通だそうで。
まあ、私も彼の言うことを信じていたわけではなかったので、そこから投資や暗号資産(ビットコイン)とはどんなものなのか、を自分で調べてみることにしました。
ネット上にはいかにも簡単に何千万も儲かることができるように思わせるような文句がたくさん見受けられますが、投資や暗号資産などはリスクもかなり大きくなる可能性が高いものです。
たしかに暗号資産は株式よりも少額から購入できるので、一般の人でも入りやすいのかもしれませんが、ネット上にいる億り人と呼ばれる何千万、何億、と稼げている人は、もともと持っている大きな資金をそれなりに大きいケタで使って運用しているからこそ、リターンも大きいわけです。
しかも、彼らはそれなりの知識を持って常に勉強し、動向を注意深く観察しています。それは、投資も同じです。
常に世界情勢を読んで、為替の値動きや他の投資家の動きなどにも敏感に反応できるからこそのリターンですが、それをしているプロの投資家でも、普通なら死にたくなるくらいの損失が突然出ることはありますよね。
あと気になったのは日本での所得課税のことです。
シンガポールは投資で得た収入に対して税金のかからない国です。そのため多くのディーラー(投資家)が移住しています。
でも日本ではどうでしょうか?
日本では、給与以外に投資などで得た20万円以上の収入には雑所得として所得税がかかります。給与所得ではないので、控除はありません。
しかも、専業主婦の私は夫の扶養に入っているので、万が一投資などで儲かって控除の上限を越えてしまうと、当然扶養から外れることになり、税金なども自分で支払うことになります。
そんな投資をしていたことも夫に内緒というわけにはいかなくなるし、トラブル必至。
左うちわで笑って暮らせるほど稼げればいいですが、一回くらい中途半端に稼げたとしてもかえって損することにもなりかねませんよね。
まあ、投資や暗号資産についてしっかりした知識を持ったうえで、リスクを覚悟して余剰金を使ってやってみるなら、経験を積むという意味ではいいのではないかとは思いますが、私には縁のない世界だという結論となりました。
ジョナサン、私はビットコイン(暗号資産)について少し勉強していますが、そもそも私には元金がありません。
誰かにお金を借りることもできません。
そして国際ロマンス詐欺が流行っていることも知っています。
注意喚起されています。
私はジョナサンを友だちと思っています。
疑いたくありません。
だから、せっかくですがビットコインについての話はやめましょう。
あなたは私にビットコインについて教えてくれたので、私はそれを私の責任でひとりでやるべきですね。
教えてくれてありがとう。
これからよく勉強して、自分のできる範囲を考えます。
いままでどおり、お互いの趣味や家族や国の話を楽しみましょう😊
その後、しばらくは日常のことを話題にして毎日会話を楽しんでいました。
彼はコロナ禍になる前は、仕事で日本に来た時は東京タワーの近くに買ってあるマンションに滞在していた、と言いました。
そうしたらキミも一緒に暮らして、毎日夕食を一緒に作ってワインを楽しもう。
彼が詐欺であろうことは薄々わかっていましたが、夢のように楽しそうな話ばかりで、つい「本当だったらいいのにーー!!」と思いましたね。
でも、私が夫のことで愚痴を言うと親身になって聞いてくれて、また暗号資産の取引に誘うようになってきました。
そうすれば、キミと一緒に時間も共有できるんだ。
それから彼は、ひんぱんに私の予定を確認するようになりました。
僕が一緒にいるから心配ないよ。
取引は少額からできるし、暗号資産は第三者から厳重に守られているんだ。
心配ないんだよ!
口座を作る時には本人確認書類を出すし、出金したらわかるんじゃ‥?
この時、私の頭の中では警鐘がガンガン鳴り響いていました。
どうしよう、このまま言うとおりにしたら騙し取られるかもしれない。
でも、彼がもし詐欺でなかったら、親身になってくれた彼を裏切ることになる。。
出かける予定などなかったので、すぐにネットで検索してみました。
そしてある日本人女性のブログをみつけました。
それを読んで、ビックリ!ジョナサンとほぼ同じ内容の話!!
シンガポール在住で、会社経営、名前は違うけどまるで同一人物がやっているようです。もしかして私のこと?と思いたくなるほど似通った話。。
そのブログの彼女は途中で詐欺だと気がついて、騙されたフリをして仮想通貨の取引きサイトに入るところまで行ってみたそうです。
本物のサイトと似ているけど、URLや仕様などが異なっていたとのこと。
相手は、彼女にサイトの画面をスクショで送らせていちいち確認したので、その場で適当に言い逃れすることができず、相手に「そんなに稼げるなら、元金を出してよ!」と言ってみたそうです。
すると相手から「女性も自立できるように自分で稼げるようにならないといけない」などと、もっともなことを言われたとのこと^^;
そしてその後すぐに相手にブロックされたようで、既読はつかなくなったということで、結局、彼女は騙されることなく無事だったそうです。
やっぱり詐欺なんじゃーーん!!
ということで、そのまま彼のLINEとインスタグラムのアカウントをブロックしました。
数週間のやり取りでしたが、疑っていたとはいえ毎日話をしていた相手と突然別れることになるのは、思ったよりロスになり、しばらく精神的に引きずりましたよ。
そんな詐欺と出会うのも初めてでしたしね。。
でも、本当に被害に遭われた方たちは、数ヶ月もやり取りしてすっかり信じて本気になっていた上に、数百万〜数千万円もの金額を騙し取られたのですから、金銭的なことだけでなく、精神的にも相当なダメージを受けたことと思います。。
人の心につけ込むなんて、ホントに本当に、詐欺って卑劣です。
【case1】おわり。